6N23P-EV差動ラインプリアンプ

ロシア管アンプ構想の記事で、ロシア管を用いた真空管アンプの大枠を構想しました。中μ低rp管を採用することで広帯域とそれなりの利得を実現し、入力を平衡にすることでもう少し利得を稼ぎ、ロシア管を採用することでコストを下げ、等々の涙ぐましい悪あがきでありました。

構想 その1

ここではプリアンプの構想を少し具体的に練ってみたいと思います。回路の基本はぺるけさんの真空管式差動ライン・プリ・アンプです。一段差動増幅回路のプレートからグリッドへ負帰還を掛けるのが特色です。大きく(?)違うところは、

  • 平衡出力が前提
  • 当初からラインセレクタあり
  • バス・ブーストなし

といったところ。細かいところもちょこちょこ変えていきたいところですが、ある意味完成された回路ですので「コレ」といった工夫はできなさげ。

さて、まずは回路回りから。ぺるけさんのオリジナル回路では不平衡出力になっているため、グリッドがアースされた方の球のみから出力を得ています(反転回路なので、こちら側がいわゆるhot側になります)。負帰還もこちらの球のみ掛けられます。これに対して平衡出力では、両方の球から出力を得ることになります。当然、グリッドに信号が入力される側の球にも負帰還を掛けることになります。

ラインセレクタについては特に難しいことはありません (配線が入り組んで実装は面倒ですが)。素直に組み込みます。

次は、回路定数について見て行きましょう。

構想 その2

さて、今回はもう少し詳細に回路を検討していきます。

まずは6N23P-EVのデータシートを入手しましょう。インターネットのお蔭で、ロシア管のデータシートも簡単に手に入ります。データシートの収集サイトFrank’s electron Tube Data Sheetsに行けば、オーディオ用途のほぼすべての真空管のデータシートを入手できます。ただ、6N23P-EVのデータシートは見辛いので、今回はPhilipsのE88CCのデータシートで代用しましょう。このPDFの27ページ目を印刷して手元に用意します。

さて、B電源ですが、適当に100V-200Vのトランスを入手できたとして、整流→平滑で200Vまでドロップしたということにしておきましょう。そうすると、ロードラインと横軸(プレート電圧)との交点は200Vになります。プレート負荷を10kΩにすると縦軸(プレート電流)20mA、20kΩにすると縦軸10mAと、それぞれ横軸200Vとを結ぶ直線がロードラインとなります。

ここで、出力インピーダンスについてちょっと考えてみます。カソード接地増幅では、出力インピーダンスは真空管の内部抵抗と負荷抵抗の並列合成値です。出力インピーダンスは次段の入力容量とハイカットフィルタを形成します。つまり、出力インピーダンスが低いほど広帯域になる訳です。

6N23P-EVの内部抵抗を2.6kΩとすると、出力インピーダンスはプレート負荷が10kΩの場合で2.1kΩ、20kΩの場合で2.3kΩとなり、ほとんど変わりません(つまり、出力インピーダンスを下げるにはプレート負荷を小さくしてもあまり意味がない訳です)。プレート負荷が大きい方が歪みは小さくなりますので、ここは20kΩを採用しましょう。

それでは再度ロードラインを眺めてみます。プレート電圧が100Vでグリッドバイアスが-2.6V程度、プレート電流が5mAというポイントが見つかります。ここを動作点にしましょう。一応、簡単に検証してみますと、バイアスは明らかに-0.7Vより深くなっています。プラスに2V弱の余裕があるので、初速度電流が流れることはないでしょう。深い方にも十分に余裕があり、1V程度の信号で歪んでしまうこともなさそうです。

ということで動作点が決まりました。次回は負帰還のあたりを検討します。

構想 その3

前回はロードラインを引いて動作点を決定しました。今回は負帰還量を決定します。

一般的な真空管アンプでは、6dBからせいぜい10dB程度の負帰還しか施しません。しかしこのプリアンプの利得は2倍程度ですので、ガッツリと負帰還を掛けることになります。と言いますか、負帰還量が利得を決定します。言うなれば、OPアンプの反転増幅回路と同じです。

6N23P-EVのμは33、内部抵抗は2.6kΩ、プレート負荷は20kΩです。このとき、6N23P-EVの利得は29 (33*20/(20+2.6) となります (実際の動作点近くの内部抵抗はもうちょっと大きいので、利得は少々小さくなります)。これが二つの増幅部で分けられるので、一つの増幅部の利得はおよそ14。先立っての構想によると必要な利得は2.2倍なので、16dB (20log(14/2.2))の負帰還を掛けることになります。

さて、このラインプリアンプでは、プレートからグリッドに負帰還を掛けるP-G帰還を利用します。グリッド側抵抗を56kΩ、負帰還抵抗を100kΩとした場合、負帰還定数は2.79 ((56+100)/6)となります。このときの利得が約2.33 (14*2.79/(14+2.79)) です。上述しましたが、実際の動作点近くでは利得が少々小さくなりますので、予定していた2.2倍より大きくなりますがコレでよしとしましょう。

ここで一応、入力インピーダンスを見ておきましょう。P-G帰還の入力インピーダンスはグリッド側抵抗+(負帰還抵抗/(裸利得+1))です。今回のケースですと、約63kΩ (56+(100/(14+1)))となります。入力ボリュームに50kΩのものを利用するとすると、mix位置で50kΩ、max位置で28kΩとなります。

ここまで来れば、あとはもう一息です。次回は全体的な定数を見ていきます。

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