ロシア管アンプ

ロシア管は安いです。欧米の同等品とは比べものにならないくらい安価で入手できます。また、基本的に軍用なので、信頼性が高いです(信頼性と音質は別の次元の問題なのではありますが)。ということで、ちょうどロシア管が手元にあることだし、全段がロシア管の真空管アンプを製作しようと思ったのがこの記事の始まりであります。

構想その1

この半年ほど、新しい真空管アンプの構想を練っています。現在、自宅では6922(Philips ECG)の平衡出力差動プリアンプと13EM7(Sylvania)の平衡入力全段差動アンプを、会社ではE88CCとEL34(ともにJJ)の全段差動アンプを使ってます。いずれも自作ですが、これら3台の経験を活かして新たなアンプを自作したい訳です。

まずは物理構成。利得を稼ぎたいのとラインセレクタを付けたいのとで、プリアンプとメインアンプは別にします。非平衡入力ではメインアンプの初段の利得が差動なので半分になります。それを防ぐためにもプリアンプは平衡出力、メインは平衡入力にして、アース処理やチャネル間クロストークなどの面倒な問題の少ないモノラルアンプ2台に分けます。

回路構成は差動アンプ。失敗したくないので、当面は一択です。

まず出力管。これまでは傍熱管ばかりだったので、今回は直熱三極管を使おうと妄想してます。そこで白羽の矢が立ったのが、ロシアの6S4S (6C4C)。6B4G互換の直熱三極管です。6B4Gよりは安価に入手できます。eBayなら2本で$45$40程度です(送料別)。冷戦期の60年代の球に人気があるようですが、細かいことは気にしない方向で。

6S4Sをドライブするには、それなりの球が必要です。三段構成とすれば利得面での設計は楽なんですけど、負帰還(による発振)のことを考えると躊躇されます。今の私の技量も考えると、深く考えずに済む二段構成が無難でしょう。

二段構成となると、初段はそれなりの増幅率(μ)を持つ球が必要となります。順当な選択としては6SN7GTあたりなのでしょうが、一般に高μ管は内部抵抗(rp)が高いので高音域が犠牲になります。6SN7GTも内部抵抗が44kΩもありますし、今回は出力段が入力容量の大きい6S4Sであることもあり、選択肢としては微妙。

かと言って、rpに気を取られるとμを稼げず。「アンプ設計はあっち立てればこっち立たず」とはよく言ったものです。

構想その2

メインアンプの出力管は6S4Sで決まりですが、この球をドライブできる球はないものか。

広帯域なアンプに仕上げたいので、初段管はなるべく低rpの球を選択したいところ。低rpの定番は6DJ8/ECC88シリーズですが、μ=30ちょいの管ではちょっと心許ない感じ。低rpかつ高μと言えば6CM4/EC86あたりが候補なのですが、今回は出力管がロシアなのに合わせて、同じくロシアの 6S45P-E(6C45Pi-E)というchallengingな球を選択します。

6S45Pは、WE437AやSTC 3A/167Mと互換とされる低rp高μな球です。gmが40mS以上ありますので発振に要注意ですが、rpは1.2kΩ程度なのにμは50もあるトンデモな球です。平衡入力なので利得はそのまま、6S4Sのフルドライブも可能なハズ。

プリアンプもメインアンプ同様、広帯域を狙うために低rpな球を選択します。メインアンプがロシア尽しですし、折角ですのでプリアンプにはロシアの6N23P-EV(6H23P-EB)を採用します。この球は6DJ8/ECC88互換の低rp球です。

以上で球の選択は完了です。次はざっくりと利得の計算をしてみましょう。

構想 その3

構成は音源-(セレクタ)-プリアンプ-(平衡)-メインアンプ-スピーカで決まり、プリアンプは6N23P-EV差動一段、メインアンプは初段6S45P-E、出力段6S4Sで決定。とは言え、本当にこの構成で大丈夫か検討しましょう。

まずは出力段の6S4Sをフルドライブするのに必要な電圧を求めましょう。一般的な2A3の動作点、プレート250Vにバイアス-45Vで60mAを前提にしますと、45Vの2倍、90Vp-pが必要です。これは約32Vrms (90Vp-p / 2 / 1.4142)になります。

初段6S45Pの増幅率は約52です。実際に負荷を与えると多少値は小さくなりますので、ここでは概算として利得を40倍とします。そうすると、負帰還なしの状態で入力には0.8Vrms (32Vrms / 40)が必要となります。負帰還を3dB程度掛けるとすると、負帰還ありの状態では1.1Vrms (0.8Vrms * 1.41)の入力が必要です。

プリアンプのライン入力が最大1Vrmsとすると、必要なプリアンプの利得は1.1倍となりますが、ちょっと心許ないです。平均的なライン入力は0.5Vrms程度と見做せば、プリアンプの利得は2.2倍となります。

メインアンプ初段の利得をもう少し稼げるとよいのですが、まあ問題ないでしょう。不平衡入力の差動アンプだと初段の利得は1/2されてしまうのですが、平衡入力の場合はそうならない分、利得を稼げるのがいいトコロであります。

以上で、おおまかな設計は完了です。これをベースに具体的なアンプの設計に落とし込んでいきましょう!

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