ぺるけ式FET差動ヘッドホンアンプ

ぺるけさんと言えば全段差動PPアンプのエヴァンジェリストとして著名ですが、そのぺるけさんが設計された真空管/FET式差動プリアンプの派生であるFET差動ヘッドホンアンプ(HPA)を自作してみました。

構想

OPアンプで電圧増幅してダイヤモンドバッファで出力、というHPAはよくありますが、ぺるけ式はFET(2SK170)による差動増幅をダイヤモンドバッファで出力します。細かい解説はぺるけさんのサイトに譲るとして、少し回路をいじってみました。こんな感じ;

  • 電源アダプタを24V 0.5Aのアダプタに変更
  • 初段の負荷を定電流負荷(カレントミラー)に変更
  • ダイヤモンドバッファの入力に抵抗(100Ω)を追加
  • エミッタ抵抗を10Ωから5Ωに変更、電流は30mA程度に
  • 出力トランジスタは2SC5171/2SA1930に変更
  • 他のトランジスタは2SC1815(L)/2SA1015(L)を採用
  • バッファ段の抵抗を調整して電流を4mA程度に
  • 負帰還量を増加、アンプの増幅度は6dBに
  • 負電源を-2.4V程度に変更 (Diを2コから4コに)
  • デカップリング・DCカット用コンデンサの容量を3,300uFに増量
  • 電源にEMIフィルタを追加
  • 電源のリプルフィルタを二段に強化(?)
  • 全体的な微調整

目論見としては、まずカレントミラーで回路の素の増幅率を上げ、かつ負帰還量も増やすことで低雑音化を目指しています。負帰還量が増えたことで、負電源も強化する必要がでてきます(ここら辺の理屈はayumiさんの記事を参照のこと)。更に、回路の安定性を高めるため、ダイヤモンドバッファの入力(ベース)に発振防止を目的とした抵抗を挿入しました。

電源については、単に24V 0.5Aのアダプタが手許にあり、かつ12Vより24Vの方が電圧の設計に余裕が出るだろうということだけです。結果としてはB電源電圧はAC100V版と似た値になりました。

出力用のパワートランジスタには2SC5171/2SA1930を選びました。元回路の2SC3421/2SA1358より最大定格が大きかったりIc-hFEの直線性がよいようですが、出力容量は同じような値です。他のトランジスタは2SC1815/2SA1015のローノイズ版です。これだけ強帰還が掛かっているのであれば通常版とあまり違いはなさそうですが、気分の問題ということで。

パーツ集め

パーツ類は基本的には一式すべて秋葉原で集められます。

  • シャーシ: エスエス無線 @ラジデパ2F
  • VR, つまみ, 基板: 門田無線 @ラジデパ3F
  • LED: 瀬田無線 @ラジデパ2F
  • RCその他小物: 千石電商
  • Tr, FET: ヤフオク等
  • EMIフィルタ: マルツ

シャーシはぺるけさんの作例でも使われているタカチのHEN110420シルバーです。肉厚なので加工が大変そう。VRは門田無線で安価なアルプスのミニデテントを購入。ぺるけさんお薦め、スタンレーのLED(3889Sシリーズ)は瀬田無線2F店にありました。RCは例によって千石で購入。信号が流れる箇所はタクマンREYで、他は酸金やらカーボンやらテキトーに。コンデンサも千石で売られている東信の安価な低インピーダンス品

ジャックの類の小物も千石で一通り揃います。ただ残念なことに、スリーブがシャーシから絶縁される3.5mmステレオジャックで外付けのものが見つかりませんでした。ま、HENシリーズは正面のパネルがシャーシ本体から分離するタイプですし、何より見た目がいいのでよしとします。

配線は千石で安く購入できる20Pのラグ板2枚で済まそうと考えたのですが、スペース的にも無理っぽいですし、パーツもオリジナルから増えているので断念。HENシリーズのシャーシの横幅にもちっとバラエティがあればよいのですが。それはそれとして、タカスのユニバーサル基板IC-701-74を採用。無駄にガラスエポキシですが気にしない方向で。紙エポのものは、ぺるけさんが有償配布しています。

肝心要のトランジスタ類ですが、まずFET(2SK170-BL)はヤフオクでコンプリの2SJ74と同時にまとまった個数を購入。2SC1815(L)と2SA1815(L)も、GRランクとYランクをそれぞれまとめてヤフオクで購入しました。2SC5171と2SA1930はRSコンポーネンツから購入しました(1コ\70程度)が、探せばもっと安くで入手できるかも知れません。秋葉原であれば、トランジスタ類はマルツで購入できるようです(少々割高ですが)。

スイッチング電源から発生する高調波ノイズを除去するためのEMIフィルタは、マルツでDCラインフィルタとして売られています。

選別・チェック

実装に着手… する前に、部品のチェック等を行いましょう。まずはトランジスタ類を選別します。いずれも2ペアずつ必要です。同一種別内でペア取りすべきは;

  • 初段の2SK170-BL: Vgs
  • カレントミラーの2SA1015: Vbe

ダイヤモンド・バッファ段用にhFEを揃えたコンプリペアも必要です;

  • 2SC1815/2SA1015 (GRランク)
  • 2SC5157/2SA1930

一応、定電流回路用の2SC1815(Yランク)もhFEで揃えたペアを取っておきましょう。

FETの選別には先日作成したFET選別治具(冶具)を利用します。トランジスタの選別は簡易的に済ませちゃいます。コレクタとベースを1kΩで繋ぎ、エミッタと電源の間にも1kΩを入れ、コレクタとエミッタ(に入れた抵抗)を電源に繋ぎます。電源が9Vの006P型乾電池であれば、Icはおよそ8mAとなります。実際に使う時とIcが違いますが、あまり神経質になる必要はないでしょう。たぶん。

あとは、抵抗値は一通り確認しておきましょう。チェック後の抵抗は一緒くたに袋に戻すのではなく、抵抗値ごとにまとめておくと便利です。私は抵抗値ごとにまとめて、リードの一端をセロテープで紙に貼りつけています。

配線の検討

部品の選別が完了しましたので、さっそく実装に着手… する前に、部品の配置を決めます。オリジナルの回路・部品を使う場合にはぺるけさんのサイトにある実体配線図のままに実装すれば問題ありませんが、今回は初段の負荷をカレントミラー化したのとタカスのユニバーサル基板(IC-701-74)を使うので、実体配線図は参考になりこそすれ、そのまま真似することはできません。

実際問題として、回路図とユニバーサル基板を眺めているだけで配線が思い付く境地には至っていません。そこで、Excelでこのユニバーサル基板(IC-701-74/IC-301-74)のパターンを作成しました。パターン面ではなく実装面から見た図になっています。プリントアウトして利用下さい。

本格的なCADを使うのもよいと思いますが、たまに手を動かすのもいいものです。ぺるけさんの記事平ラグパズルもどうぞ。

で、肝心要の配線・実装案ですが、一応それらしい形でまとまりました。が、横に繋ぐジャンパー線がどうにも多くて精進の足りなさを実感させられています。まあそれはそれとして、部品の実装・配線に着手しましょうか。

実装

チェック

昨日のパターン(Excel)を使って実体配線図を作成して部品を実装、配線し、配線が完了したところで試験的に電源を入れてみました。

まず、LEDを点灯させる分圧回路の配線を間違えていましたので、ここを修正。次にB電源の電圧が設計通りに出ていないことが判明。RCのリプルフィルタでの電圧降下が異様に大きい=異常な電流が流れているようです。各抵抗での電圧降下を調べれば電流値は計算できますので、逐一確認してみました。

増幅回路にはほとんど電流が流れていないことが分かりましたので、どうも定電流回路の配線ミスであろうことが分かりました。よーく確認してみたところ、配線ミスを発見。初段の定電流回路用の電流を確保する12kΩまわりの配線を間違えていました。これを修正することで、設計よりちょっと低いものの、ほぼ設計通りの電圧になりました。

一通りの電圧の確認が済んだ後、さっそく動作確認です。ハムが鳴りました。ボリュームに触れるとハムの音量が変わることから、ボリュームがアースから浮いていることが予想されます。テスターで導通を確認したところ、案の定、ボリュームとシャーシとの導通がありませんでした。パネルを外して、ボリュームと接するところのアルマイトをやすりでガリガリ削って、シャーシ(パネル)とボリュームとの導通を確保し、ハムも解決。

再度電源を入れて、適当な音源を繋いてみました。…まったくエイジングされていないせいか、ザラついた音です。正直、音楽を聴くに耐えません。ただ、左右チャネルの分離感や豊かな低音など、エイジング後の音質を期待させる素養はあるようでした。しばらく導通しっぱなしにして様子を見ます。

調査の結果、誤配線の原因が分かりました。前者(LEDの分圧回路)は単なる勘違いだったのですが、後者は、実体配線図をドラフトから清書する時に転写し間違えていました。ドラフトは何度もチェックしたのですが、清書した配線図のチェックが甘かったのが原因です。反省。

完成

昨晩は一晩通電しっぱなしにして、エイジング+電解コンの自己修復を促しておきました。で、本日。シャーシが想像していた以上に暖かくなっています。熱くはないのですが、ちょっと嫌な予感がしたのでシャーシを開いて、再度、各所の電圧を計測し直してみました。

結果、片チャネルに異様に電流が流れていることが判明しました。昨日の記事でも書いたように、当初は初段の定電流回路に配線ミスがありましたが、どうやら、その修正時にトランジスタを熱破壊してしまったっぽいです。定電流回路のトランジスタの片方のVbeが0.6Vではなく3V程度も出ていました。

さっそくトランジスタを交換して再度計測し直したところ、今回はちゃんとVbeが0.6V程度になりました。一晩置いて頭を冷ましてからチェックすることは大切ですね。

一応は念のために他の箇所も電圧を計測し直し、再度、問題ないことを確認しました。これで完成とします。

さて、肝心の音質ですが、低音が豊かです。まずはこの一言に尽きます。ちょっと大袈裟な表現になりますが、低音の空気感が伝わります。コントラバス(ウッドベース)然り、バスドラム然り、ティンパニ然り。思わずニヤニヤと顔が緩んでしまいます。当然(?)ハムノイズの類いは一切聴こえません。遮音性の高いカナル型ヘッドホンのER-4Sを付けると、かなり深く音楽に没頭できます。もっと聞き込んでみたいですね。

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