LS8A直結全段差動PPアンプ その1

この夏のために省電力アンプを作成しようと春頃から画策していたのですが、気が付いたらもう秋も深まってきた今日この頃、却ってアンプ作成にもってこいの季節になってしまいました。半年ほど温めてきたアイディアですが、そろそろ形にようと思い立ちました。

今回の第一のコンセプトは省電力アンプ、要はミニワッターです。今愛用している6S45P-E定電流単段シングルミニワッターも悪くはないのですが、正直、低音域が物足りない。豊かな低音を求めるのであれば、やっぱりPPアンプを選ぶのが無難です。しかし通常の出力管では省電力にならない。しかし既存ミニワッターのデッドコピーじゃつまらない。

省電力のもう一つのキモは、DC-DCコンバータの採用です。後述するように直熱出力管を採用しますが、電力効率のよいDC-DCコンバータを使って直流を得て出力管を点火します。その一方で、B電源の電圧のドロップには抵抗を使わざるを得ず、ここが省電力を徹底できない反省ポイントであります。

第二のコンセプトは、スッキリしたシャーシです。なるべく余計な放熱孔は空けず、ラグを立てるためだけの穴も空けず、当然シャーシ上に見えるネジの頭も少なめに。これは故・浅野勇さんの作品を眺めていて感じたポイントでもあります。

また、あまり厚みのあるシャーシだとズングリムックリ感があるので、薄めのシャーシを採用したいと思います。B電源の整流用電解コンが大変なことになりそうですが、見た目も重視ということで。

第三のコンセプトは、例によって平衡入力対応です。これはもう徹底していきましょう。

インベントリを眺めると、以前購入したITT 3A/109Bとその互換球であるGEC LS8Aが目に入りました。いずれもニッケルプレートが美しい直熱三極出力管です。元々は長寿命が求められる通信機器(中継器)用の球らしく、3A/109Bはフィラメントが4V 0.25A (= 1W)と、5V 0.23A (= 1.15W)の5A6より小さいです。しかもLS8Aならさらにその半分の0.5Wですので、4本でもわずか2Wです。素晴しい。今回は3A/109Bも視野に入れつつ、LS8Aをメインで使うことにしましょう。

出力段が決まったら、それをドライブする初段です。LS8Aのデータシートが見つからないので3A/109Bのもので代用します。が、見慣れたEp-Ipグラフが載っていません。詳細な設計は後でするとして、3A/109B互換のSTC 4021Aのデータシートを眺めてみると、グリッドバイアスはおよそ-20V弱でいいようです。ということは、初段でだいたい40Vp-pが得られればよい訳ですね。

入力は例によってバランス(平衡)入力にするので、2Vp-pの入力で20倍の利得が得られれば大丈夫です。6dBの負帰還を掛けるならその倍の40倍、12dBならさらにその倍の80倍の利得があれば安心です。最大入力を1Vrms(およそ2.8Vp-p)と仮定する、初段の利得はもう少し小さくても大丈夫っぽいです。

では初段に何を採用するか。無難に考えれば中μ低rpな6DJ8あたりですが、1本(2Unit)あたりのヒーターが6.3V 0.365A, つまり2.3Wで、LS8A 4本分のヒーター電力になります。これじゃ折角の省電力アンプが泣くってもんです。他の6DJ8類似球も当然似たようなものですので、これは半導体の出番ですね。

初段向きのJFETというと、2SK30ATMか2SK170がすぐに思い付きます。前者はgmが小さめなので、40倍の利得を得るには負荷抵抗RLを20kΩぐらいにする必要があります。出力インピーダンスも20kΩになって、出力段の入力容量(+ミラー効果)とで形成されるハイカットフィルターの影響が心配です。もう一方の2SK170であれば、ボチボチなgmがあるので出力インピーダンスは半分以下で済みそうです。

ここで2SK170の耐圧を見てみると、50Vです。40Vp-pを得るには結構ギリギリな感じです。また、40Vp-pを得るにはRLに20Vは食わせないといけなくなる訳で、仮にドレイン電流Idを3mAとするとRLはおよそ7kΩ、この時のgmは24ぐらいなので利得は170近くになります。いささか大きすぎますね。こうなると、2SK170の入力容量(+ミラー効果)によるハイカットフィルターも気になります。

2SK170の耐圧とミラー効果を解決すべく初段はカスコード、せっかくなのでブートストラップもしちゃいましょう。耐圧150Vぐらいで、一応初段なので低雑音のトランジスタを探してみると、2SC1845というのが見つかりました。カスコードの設計は後ほどするとして、初段はこんな感じにしましょう。

B電源は例によってMOS-FETによるリプルフィルタでインピーダンスは低くし、PPアンプなので左右チャネルで分けることはしません。初段用のB電源も抵抗でドロップした後にちょっと大きめの電解コンを入れるだけにして、左右で分けないでおきましょう。初段はツェナーで電圧を安定させることも考えましたが、回路全体の電流値の管理が面倒になるので却下(ツェナーに定電流回路から電流を与えればいい話かも知れませんが)。ツェナーのノイズも心配ですし。

A電源は上述の通り、DC-DCコンバータを使って直流を得ます。参考にするのはソフトン善本さんの300Bアンプです。ST1S10という電力効率90%のICを採用することで、更なる省電力を実現します。ただ、このICは表面実装用でしかも裏面に排熱パッドが付いているPowerSO-8という形状のため、ちゃんと基板を作る必要があります。ここら辺は別の記事にしたいと思います。

残る大物、出力トランスですが、出力の大きさからすれば春日のKA-8-54Pがコストパフォーマンス的にも最適な解でしょう。しかし、今回は見た目も重視するのです。LS8Aの背の高さが10cm弱あり、ソケットをシャーシに沈めたとしても明らかにKA-8-54Pは背が低い。しかも、メンテ時にシャーシを引っ繰り返すことを考えると、LS8Aより背の高い出力トランスが望ましいです。

しかしまあ高さのある小出力用の出力トランスなんてある訳がないんですよね。なので出力は目を瞑って、とりあえずサイズと価格を優先で調べてみると、ソフトンのRX-40-5がボチボチいい感じです。インダクタンスが充分大きく、ドライブ電圧が小さくてもインダクタンスの減少が小さいのもGOODです。KA-8-54Pに比べれば割高(およそ3倍!)ですが、見た目と性能のためによしとしましょう。

最後にシャーシですが、安価でいいものがなかなか見つかりません。タカチのSRDSLシリーズがもっと安ければガシガシ採用するのですが、SRDSLシリーズは高さがあるので今回のコンセプトには合いません。ラジデパのノグチさんか奥澤さんでアルミのいわゆる弁当箱シャーシを買ってきてもよかったのですが、今回は小坂井電子のKS-320を採用したいと思います。

KS-320は鉄製のフレームと底板にアルミの天板と、SRDSLシリーズに似た構成になっています。高さが40mmしかないのでスッキリとした仕上がりが期待できる一方、内部の部品の実装は大変なことになることが予想されます。また、鉄製のフレームへの加工は手間ですので、今回は天板にすべての部品を実装することにします。図らずも、故・伊藤喜多男さんの提唱する実装スタイルに近いものになりそうです。

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