バランス駆動ヘッドホンアンプ製作 その7 (改修計画)

先日の記事で、ぺるけさんの書籍『理解しながら作るヘッドホン・アンプ』に付属するぺるけ式差動FETヘッドホンアンプの基板を使ったバランス駆動ヘッドホンアンプは一旦完成としましたが、少し気になる箇所があります。

  1. 初段の動作点が最適化されていない
  2. 初段FETのドレイン電位が揃っていない

前者については、電源電圧がオリジナルの12Vから15Vに変更した(加えてマイナス電源も-1.5Vから-3Vに変更した)のに合わせて、初段の定電流回路の電流値を決める抵抗R13の値をオリジナルの510Ωから360Ωに変更したのですが、電流値が3.9mAと減ってしまい、動作点がイマイチ最適化されていません。

2SK170のデータシートにあるVds-Id曲線にロードラインを引いてみると分かりますが、最適化するには、

  • 初段に流す電流を増やす
  • 初段の負荷抵抗を大きくする

あたりが考えられます。後者であれば、裸利得が上がるので負帰還がより強く掛かり、歪率や雑音特性の改善が見込めますが、おそらく耳では分からない程度の微々たるものでしょう。また、片チャネルあたり抵抗を2コ交換する必要があり、しかも今回はジャンパー線も再配線しなければならないので正直面倒です。

ですので、取り得るのは前者の電流値を増やす方法となります。電源電圧15Vのうち、3Vが負電源、リプルフィルタ等の電圧降下を1Vとすると、有効な正電源は11V程度です。負荷は2.2kΩですから、Vgs-Id曲線に(11V, 0mA)と(0V, 5mA)の二点(切片)を結ぶ直線を引きます。動作点の電位が正電源の1/2では特性曲線の左肩(ニーポイント付近)に掛かり、特性が悪化しますので、1/2より少し電位を高くした方がよいです。適当に動作点の電位を6Vとすると、その時の電流はおよそ2.3mAです。つまり片チャネルあたり4.6mAの電流を初段に流せばよいという訳です。

この時、R15は110Ωですので、発生するR15の電圧降下は0.506V、Tr7のVbeをおよそ0.69Vとすると、Tr7のベース電位は対負電源で1.2Vです。Tr5のコレクタとTr7のベースは結線されていますので当然同電位。正電源は対負電源で約14Vですので、R11での電圧降下が12.8Vとなり、R11に流れる電流(≒R13に流れる電流)は1.28mAとなります。

Tr5のVbeを0.66Vとすると、Tr5のベース電位は対負電源で1.2Vですので、Tr5のエミッタ電位すなわちR13の電圧降下は0.54Vとなります。ここに1.28mA流れているのですから、R13は422Ωと求まります。しかしこの値はE24系列にはありませんので430Ωとしましょう。

もう一つの懸案である初段FETのドレイン電位が揃っていない件については、

  • FETを選別し直す
  • ドレイン電位を調整する半固定抵抗器を実装する

の二つの解決策があります。後者はオリジナルの回路にある解決法です。100Ωの半固定抵抗器を初段FETのソース間に入れます。これが一番コストが掛かないスマートな解決策なのですが、今回はFETがペアになっているか実装前にチェックできる(治具と呼ぶにはあまりにも貧相な)回路をラグ板に実装して、確認することにしました。

paired FET check circuit30分程度でこの回路の実装を実装し、FET選別治具を用意します。先立ってVgsを10mVごとにふるい分けてあったので、その単位で再度Vgsを計測し直し、Vgsでペアを取り、ペアチェック回路で確認します。何と! Vgsで揃っていたように見えても、チェック回路ではドレイン間に200mVもの電位差が発生するペアと呼べない組がある一方で、ほんの10mV程度に落ち着くペアもあり、何でこんな簡単な回路で確認してこなかったのかと、これまでの選別に掛けてきた時間は何だったのだろうかと、小一時間ほど自分を説教したくなりました。

何はともあれ、Vgsが近く、かつドレイン電位差が10mV程度のペアが2つありましたので、これに交換しましょう。負荷2.2kΩで10mVですから、0.0045mAのズレが生じています。負荷には2.5mA流しますので、およそ0.2%のズレです。改修前は5%のズレでしたので、およそ1/25になりました。歪み率も多少は改善されることでしょう。

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