PL33の三結+KNF

久し振りにゆっくり休める日を確保できました。ということで真空管アンプ設計ネタ。

Mullard EL34と言えばブランド信仰のみならず、xf2だのxf4だのプリント信仰まで産み出しているマニア垂涎の逸品です。EL32は最近まで見向きもされなかった駄球でしたが、Canadian GEのEL32/VT52の音質が高評価でMullard EL32はとみに人気が上がっているようです。

さあそこで、これらの球の間に挟まれたMullard EL33です。Google検索でも作例がほとんど見つかりません。超三結の作例がいくつが見つかる程度です。だが、それがいい (AA略。しかもヒーター電圧違いのPL33ともなれば、そもそもどこで入手できるの? というレベルですらあります。

さて、そのPL33、三結にしても高μ(20)なためか、rpは3kΩほどあります。楽にドライブできるのはいいのですが、ダンピングファクタ(DF)が低くて低域の締まりが期待できなさそうです。反面、カソード負帰還(KNF)が効くかも知れません。ということでKNFを掛けた差動出力を考えてみました。

出力トランスはKNF巻線のあるTANGOのXE-60-5を、と言いたいところですが、およそ半額で入手できるソフトンのRX-80-5としておきましょう。一次側がP-Pで5kΩではちと厳しいので、二次側4Ωに8Ωのスピーカーを接続するとして、P-Pで10kΩとします。これで片側の球の負荷は5kΩになります。

EL33の三結時のEp-Ip曲線をプリントアウトし、5kΩのロードラインを引いてみます。Epの最大定格が250Vなので(275VのEsgより低い?!)、動作点はEp=250Vのあたりに置きましょうか。そうすると、動作点はIp=25mA、グリッド電位は-8V (20Vp-p)でちょうどいい感じになります。この時、最大出力を概算すると3.125W (25^2 * 10 / 2000)となります(こちらを参考のこと)。

さて、次はKNFの帰還量です。二次側4Ωに8Ω接続なので、KNF巻線も16Ωから32Ωになります。この時にKNF巻線に発生する電圧は10V (sqrt(3.125 * 32))です。入力の20Vp-pは7.07Vrmsですので、帰還量は2.41 ((10 + 7.07) / 7.07)つまりは7.64dBもの数値になりました。

この時、DFがどの程度改善されるか、についても検討してみましょう。生成りのDFは概算で1.67 (5k / 3k)です。これに7.64dBのNFBを掛けると、DFは5.43 ((1.67 + 1) * 2.41 – 1)になります (ダンピング・ファクタ算出便利帳参照)。

この状態で6dBのオーバーオール帰還を掛けると、DFは11.86 ((5.43 + 1) * 2 – 1))となります。スゲー。

ただ、この時、ドライブに必要な入力は約34Vrms (7.07 * 2.41 * 2)となりますので、1Vrms (=2.8Vp-p)の入力でも34倍の利得が必要です。

この利得を差動反転回路で実現しようとすると、およそ100程度の増幅率を持つ球が必要となります。差動反転回路は入力を上下(左右?)の球で分け合うため、利得が半分になるからです。しかしこれほど増幅率の大きい球は内部抵抗も大きいため、高域の特性が大幅に犠牲になります。

二段構成ではなく三段構成に構成にすることで利得の問題は解決しますが、安定的に負帰還を掛けるために初段とドライバ段を直結したり、あるいは位相補正やスタガリングの技術が要求されることになります。ここでもまた「あちら立てればこちら立たず」な訳です。

そこで考えつくのが、アンプを平衡入力にしてしまうことです。初段が位相反転する必要なくなりますので、球の増幅率が半減することはありません。50前後の増幅度を持つ中μ低rp管、例えばEC86/6CM4やEC88/6DL4を初段に持ってくればOK。ECC88/6DJ8系ではちょっと利得が足りないかも知れません。

この構成なら、二段増幅なので安定的に負帰還も掛けられます。利得の問題も解決しています。そしてノイズに強い平衡回路になります。素晴らしい。ちょっと気になるポイントは、KNFにより出力段のカットオフ周波数が改善するため、初段とのスタガー比が取りにくくなる可能性があることでしょうか(未検証ですけど)。

どうしても気になる、ということであれば、初段にもっと低rpな5842や6S45P-EあるいはWE437や3A/167Mを採用すればよさげ。いずれも高gmで発振の恐れはありますし、検証は必要ですけども。しかも後ろ二つの球は高い! とても手が出ません。

一応書いておきますと、平衡入力するためには当然、平衡出力の機器(プリアンプ等)が必要になります。不平衡出力を入力することもできますが、この時は初段が位相反転も行いますので利得は半分になります。ですので、不平衡出力する機器がない場合は、平衡出力のプリアンプ等を自作するか、位相反転バッファを組み込むとよいでしょう。

平衡出力のプリアンプについては、ぺるけさん平衡型差動プリアンプ(工事中)関連記事が、位相反転バッファについてはソフトン善本さん悪い子の6CK4アンプ製作 基本設計が参考になると思います。

カテゴリー: tube amp タグ: , , , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です